記憶の河を遡る

聞くところによると、思い出すことは脳に良いそうです。

最近のことや昔のことを交互に思い出すのが一番いいとのこと。

しかし、私は最近のことはともかく、昔のことを思い出そうとすると、ろくでもない記憶しか浮かんできません。

幸せだった記憶なんかまるっきりなくて、人に苛められたり、苦しかったり、恥ずかしかったりする思い出ばかりですね。

これでは脳には良いのかも知れませんが、精神には良くないのではないかと思うくらいです。

そのためか私は過去の記憶に浸り、懐かしむような習慣はありません。

ただ、最近はあまりやりませんが、一時はどれだけ昔の記憶にまで遡れるかといったことに凝っていたことがあります。

ベッドで眠りに落ちる前とか、ソファで横になっているとか精神を集中できる状態の時に、できるだけ過去に遡って記憶を呼び起こしてみるわけです。

この時、最初からあまり一度に遠い昔のことを思い出そうとしないほうがいいようです。

つまり段階を踏んで徐々に過去を遡るようにするんですね。

たとえば10年前くらいから始めて、20年前、大学、中学、小学校といった感じ。

そして段々難しくなってきますから、その時は、ちょっと説明しにくいのですが、出てきた人間とか風景を足がかりに更に過去に戻るようにします。

コツを覚えるとかなり昔までたどり着くことができます。

そう云えば、三島由紀夫は生まれた瞬間の記憶があると言っていましたが、私はさすがにそこまで遡ることはできませんでした。

いつもあるところで止まってしまい、それ以上戻れないんです。

なんとなく胸が苦しくなって続けられなくなってしまう。

まるで禁断の領域でストッパーが掛かっているかのようです。

何か隠さなければならない忌まわしい記憶でもあるのかも知れませんね。

冗談はともかく、これで思いがけない発見をすることもあります。

まあ、興味のある方は一度やってみてください。

ただ、変な記憶にはまり込むと抜け出すのが大変だったり、眠れなくなるので注意したほうがいいでしょう。

ここまで書いてきて、退行催眠のことを思い出しました。

退行催眠という言葉は日本でも最近よく耳にするようになったとは思いますが、あまり詳しくない方のために、以下に簡単に説明します。

要するに、催眠術によって、過去の抑圧された記憶を掘り起こそうというものです。

これを利用して、なんらかの精神的障害の原因を取り除く療法もあります。

また、退行催眠によって生まれる前、つまり前世の記憶まで思い出すことができるとも云われています。

退行催眠は、ご想像の通り、アメリカで生まれたのですが、ある女性が子供の頃に父親が殺人を犯したことを思い出した事件(1990年)をきっかけに、一躍注目を浴びました。

そして、多くの女性が幼い頃の性的虐待の事実を思い出し、父親に対して裁判を起こすといった現象も見られています。

しかし、その後こうした退行催眠によって呼び覚まされた記憶の信憑性について疑問視する声が高まりました。

確かに、これらの記憶は細部にわたって鮮明であるために一見真実であるように思えますが、実際には、それが事実であるとの証明がほとんどの場合できないんですね。

記憶とは本来非常に不確実なもので、事実とは異なる情報が思い出されてしまうこと、つまり、記憶システムの中で記憶情報の変容が起こってしまうことがあります。

これは、本人には間違った記憶だという自覚がまったくなく、正しい記憶のつもりでいることから、思い出せない場合よりタチが悪いと言えるでしょう

また、退行催眠には術者の能力、術者による暗示、被験者が過去に見聞きした情報の混入、被験者が術者の潜在的な欲求に応じてストーリーを演じる可能性などの問題があるとも考えられています。

こうした退行催眠で呼び起こされた記憶は、「抑圧された記憶」ではなく「偽りの記憶」であるとする考えが一般化し、退行催眠による記憶だけでは裁判の証拠にはならなくなりました。

余談ですが、宇宙人よる誘拐事件(アブダクション)の調査においても、退行催眠を利用して記憶が呼び出されることが多いのですが、これらのアブダクション情報は、熟練した催眠治療の専門家の間でも、その正確さに多くの疑問がもたれています。

大体、退行催眠肯定論者が生まれ変わり研究の権威としてよく紹介するイアン・スティーヴンソン博士さえ、「前世の記憶を探り出す確実な方法だとして催眠が用いられている状況を何とか終息させたい」と言うほど、その実体はお粗末なものなのです。

ただし、いまだに多くの人が「抑圧された記憶」という神話を信じており、記憶は簡単に書き換えが可能だということを知らない人も多いことも確かです。

ところで、退行催眠とは別の忘れていた遠い記憶を甦らせる方法がありますので、ご紹介します(昨日、少し書いたものの補足です)。

ベッドで横になって行いますので、なかなか眠れない時にでも試してください。

ただし、甦った記憶が事実であるかどうかは神のみぞ知ることをお忘れなく。

まず、マインドフルネス等で完全にリラックスします。

次に、意識を集中し、記憶を段々と遡っていきます。

イメージとしては、河を遡るや山に登る感じでいいでしょう。

ただ、上に行く感じには違和感をもつ人も多いかも知れません。

通常は海をイメージすればいいと思います。

潜って行く感じにするわけですね。

記憶の海の底までダイブするのはわかり易いイメージだと思います。

記憶は古いものの上に新しいものが積み重なっていく感じだからです。

こうしてできるだけ過去に遡って記憶を呼び起こしてみます。

ただし、この時、最初からあまり一度に遠い昔のことを思い出そうとしないほうがいいようです。

つまり段階を踏んで徐々に過去を遡るようにするわけです。

たとえば10年前くらいから始めて、20年前、大学、中学、小学校といった感じ。

そして段々難しくなってきますから、その時は、出てきた人間とか風景を足がかりに更に過去に戻るようにします。

思いがけないものに出会うことがあります。

また、過去の隠れていたトラウマの原因を探り当てることもできるかも知れません。

ただし、あまり無茶をしないでください。

無理だと感じたら止めたほうがいいでしょう。

下手をすると帰ってこれなくなる可能性があります。

一旦、止めて次の時に再開することもできますしね。

ところで、この記憶の海の底までダイブする方法は、実は、サイコダイビングからヒントを得ています。

サイコダイビングは記憶だけではなく、精神構造全体に潜るわけですが。

これは作家の故小松左京氏が最初に打ち出したアイデアで(「ゴルディアスの結び目」)、やはり作家の夢枕獏氏がその作品(サイコダイバーシリーズ)の中で発展させています。

このイメージは非常に面白いですね。

私の見る限りでは、霊能者や精神感応者といった人たちはほとんどの場合、人の精神の上っ面だけを撫でているようですが、この方法では人の精神の中に潜っていきます。

まずサイココンバータと呼ばれる装置を使用して、精神の波長を同調させてから精神の中に潜り、様々な抑圧された記憶を探り出すんですね。

そう云えば、サイコダイビングをすると称する占い師がいるようですが、彼もここからアイデアを得たのでしょう。

しかし、残念ながら今のところサイココンバータなる装置は存在しませんし(玩具に同名のものがありますが、機能は全然違います)、サイコダイビングも実行は不可能です。

今のところは記憶を遡ることができるだけです。

では。

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