ある詩人とそのファンのはぐくまなかった愛の物語-現実は厳しい

最近、詩人の金子みすずさんが再び脚光をあびているようです。

確か数年前にもその詩がCMで使用されて話題になっていました。

しかし、彼女の詩はいいですね。

詩心など皆無でHeart of stone(ザ・ローリング・ストーンズの大昔の歌にあります)と言われた私にも響くものがあります。

それで詩人つながりでもないですが、今日は少し前に読んだ呉智英氏の「健全なる精神」に出てきた、ある詩人とそのファンの「愛」の話を紹介したいと思います(元々は伊藤整氏の 「日本文壇史」からの引用とのこと)。

ただし、「愛」なんていうと、ロマンティックな方向を期待されるかも知れませんが、あにはからんや、心を打たない、非感動的な話です。

では始めます。

明治時代に横瀬夜雨(敬称略、以下同じ)という詩人がいました。

彼は幼少期の病気のために、下半身を動かすことができなかったのですが、自分のそうした不幸な境遇を嘆く甘美な詩を作り、発表していたんですね。

彼の詩に感銘を受けたファンも多く、特に少女たちが魅了され、愛を競い合っていたそうです。

中でも依田芳恵は両親の反対や、距離を乗り越えて、文通以外に会ったことがない横瀬への嫁入りを志願しました。

そして、彼女は横瀬のところに押しかけてきます。

何かドラマやマンガで似たようなストーリーを何度か見たことがあるような気がしますね。

大抵の場合、主人公は身体障害者であっても、イケメンで格好がいい。

しかし、現実はそんなに甘くなかった。

彼女が目にしたものは、古いなりにも堂々とした豪農の邸ではなく、「暗く古びて、そそけて、汚らしい大きな田舎屋にすぎない」詩人  横瀬夜雨の実家だったのです。

横瀬自身も「あの情熱的な詩句の訴えを思わせるものが何もなく、すわったまま冷静に散文的に話を続ける一人の身体障害者」でした。

彼女は落胆します。

そして、どうしても横瀬になじめず、実家に帰り、消息を絶ってしまいました。

どうですか。

彼女を酷い女性だと考える人もいるでしょう。

上に書いたようなドラマやマンガだったら、女性は何もかも受け入れて詩人と結婚するといった結末になったはずです。

しかし、再度書きますが、これが現実なのです。

ただ、横瀬は真面目というか、誠実な人ではありますね。

甘い言葉をささやいて若い彼女をたぶらかし、もてあそぶこともできたはずですが、それをせずに、病める詩人に身を捧げる処女という彼女の愛の空中楼閣を粉々に砕いて上げたのですから。

ところで、彼女の選択は賢明だったのではないでしょうか。

そのときの勢いのままに、意地を張って横瀬と結婚してしまうといった可能性も考えられます。

そして、一生そのことを悔やんで生きていく。

引き返すことができて本当によかったと思います。

もちろん、相手が身体障害者であっても迷わずに結婚し、幸せに暮らしている女性も沢山いるでしょう。

しかし、依田芳恵の場合は、上に書いたように、病める詩人に身を捧げる処女という幻想を抱え、恋に恋した挙げ句、勝手に幻滅しただけです。

とは云え、若気の至りの愚行であることは否定できないとしても、彼女を責めることはできないと思います。

依田芳恵のようなケースは今ではないと思われるかも知れませんが、占い師なんて仕事をしている私にいわせれば、会ったことがない相手を勝手に理想化して、恋しているなんてことはそれほど珍しいことではありません。

まあ、いってみれば誰でも恋愛中は何らかの幻想を抱いているようなものだということもできるかな。

できれば、結婚して幻滅することがないように冷静になる時間を持つようにしてください。

しかし、みんな他人のいうことに耳を貸さないんだよなあ。

では

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